About 関西学院高等部 数理科学部?

私は1995年頃から高校生と共に数学研究を行ってきました。

2013年にプログラマーの福井昌則氏が合流してからは、情報科学系の活動も平行して行っています。

 

今までを振り返ると、高校生に研究指導をしてきたと言うよりも、若者の感性の素晴らしさに感動して、彼らのアイデアを数学的にサポートすることで、専門の数学者にも思いつかないような定理や公式を発見して、その過程で高校生を教育し、同時に彼らの優れた感性によって、私自身も数学的な感性を磨くことができました。

福井氏も、高校生と一緒に活動をするようになってからの方が、思いつくアイデアが数学的にも、IT的にも増えたことを実感されているようです。

 

高校生達は優れた発想を持っています。数学的な技術では未熟ですが、数字の列から未知のパターンを発見したり、既にある問題から全く新しい問題を創造したりすることにおいては専門の数学者を越えるものを持っています。

 

最近の成果としては、国際雑誌Integers2015,2016に連続で論文が掲載されたこと。

査読付き国際学会であるThe 19th Japan Conference on Discrete and Computational Geometry, Graphs, and Games査読審査を通過して、部員が発表したり、情報処理学会のゲーム情報研究会で 30歳以下の研究者に与えられる奨励賞を部員が受けたことなどがあります。

  

最近では大分増えてきた高校生による数学研究ですが、それらの活動と私達の活動には全く異なる点があります。

それは、私達が行っている研究は、数学者が行う研究と同じ目標を持っており、新しい公式や定理を発見して証明することであるのに対して、他の高校で行われている数学研究は再発見でも良いという観点からなされていることです。

国内のコンテストにおいても、高校生が工夫したという事実を評価し、それが本当に新しいかどうかはあまりあまりこだわりません。高校生による数学研究への私達のスタンスと、他の多くの高校のグループのスタンスは異なっていますが、どちらの方法が教育方法として高校生に適しているかを決めることはできません。それぞれに良い部分があると思います。

 

しかし教師と高校生が一緒に夢に向けて努力する時、本当に新しい定理や公式を発見して、後代に残すという目標の方が、夢としては素敵でないかと思っています。

私は数学の博士号を持っていますが、数学研究者の喜びは新しい定理や公式を発見して、それが数学という学問の中に残っていくことにあります。再発見を喜ぶ数学者はいません。

 

私達は発見の喜びを日々味わっています。もちろん、この夢の方が難しいことは事実です。

しかし多くの人が考えているほどには、困難なものではありません。

 

私の大学院時代の指導教授であった工藤弘吉先生は、極めて独創的な数学者でした。先生は計算が速くなく、証明を思いつく速度も決して速くありませんが、独自な理論を数多く作り出しておられます。工藤先生は学生だった私に「研究のテーマはどこにでも転がっていますが、多くの人はそれに気がつかず、拾うことをせずに、蹴っ飛ばしていきます」と言われました。

学生の時の私には、新しい数学を発見するためのテーマはなかなか見つからず、先生の言葉を理解できなかったのですが、今の私は新しい数学公式を発見するようなテーマは高校生の前にもたくさん転がっていると考えています。

 

また情報系では大学の工学系やIT系企業の人が思いつかないようなアイデアを出すことができています。

数学で新しいことを発見するためのノウハウは,情報系で新しいアプリを作るときのノウハウに繋がります。

 

情報系の方では、日本のトップコンテストであるU22プログラミングコンテストにおいて、2015年と2016年に入賞することができました.大学生や工業高専の生徒、プロを目指す専門学校生と競り合えたことは、誇りに思っています。

また、総務省主催の統計データ利活用アプリケーションのコンテストでは、大学のデータ科学者や企業のIT責任者のチームと競り合って、全く別の発想によって一位の総務大臣賞を得ることができました。 

 

私達の研究の特徴は、計算機を多用することです。

数式処理ソフトMathematicaを開発しているWolfram Researchのサポート、国立研究開発法人科学技術振興機構の助成金を得ていること、各種の賞による賞金などによって、Mathematicaを搭載したノートパソコンを研究メンバーが一人一台使える状態になっており、数学研究のかなりの部分が計算機によって行なわれます。

このことは,新しい事実を発見するために非常に有利な環境を作っています.

 

私達が研究した成果は、日本を含む9カ国の専門誌で論文(査読付き34編、査読付きのUnderGraduate Journal4篇、数理解析研究所講究録などの査読なしの論文10)として掲載しました。

 

また、7カ国の国際学会で発表しました。

 

生徒が参加した数学系高校のコンテストでは、カナダの全国Web科学コンテストであるCanada Wide Virtual Science Fair8年連続の1st prize,フィールズ賞受賞者S.T.Yau博士記念国際数学研究コンテストである、Yau Award3年連続のsemi-final(2014年は決勝進出)、Google科学コンテストのAsia代表、JSEC(朝日新聞)4回の本選出場して、そのうち1回は国際コンテストの日本代表になっています.

 

                                  文責 宮寺 良平 2017/01/01

 

 

みなさま、はじめまして。私はプログラミング講師を勤める福井昌則と申します。

IT会社を営みながら、社会人大学院生としてプログラミング教育を研究しております。

 

プログラミングと聞いて、みなさんは何を想起するでしょうか。

ゲームという人、マニアックなイメージがあるという人、スペシャリスト的なイメージを持つ人、一部のハッカー的な人たちの印象を抱く人など、様々でしょう。

しかし、もっと一般的な社会生活において必須となってくる力であると思います。

(この辺りは、Computational Thinkingと呼ばれている力に相当するものです。)

 

プログラミングは自己表現の手段として、とても重要なキーであり、これから人工知能などの本格的な導入などから

進展する高度情報化社会において、そのようなスキルは必要不可欠です。

例えば、高度情報化社会においては、多量の情報をネットを通じて得ることができます。

しかし、その真偽をどうやって判定するのでしょうか。そのとき、判定の基準となるしっかりとした知識基盤が必要です。

現代社会における知識基盤として重要なのが、平たく言えばITリテラシーであり、それを深めるためにはプログラミングの

力を身につけるのがとても重要ではないかと考えられます。

つまり、情報化の進展と現代社会における知識基盤の確立は切っても切り離せないのです。

口で言うのは簡単なことですが、このことを理解して実践している人は多くありません。

(現実問題として、中学校や高校の教育などで情報やプログラミングの授業が中心となることは当分の間ないでしょう。)

 

また、スマートフォンなどといった便利なものをただ享受するだけではなく、原理を知り、そして困難な社会問題を自分で

解決する、いわゆるアントレプレナーシップの精神はこれからの時代においてさらに重要となってきます。

そのときにプログラミングは大きな力の一つとなりえます。

 

プログラミングは、皆さんがやりたいと思うことと「かけ算」することによって、大きな力を発揮するのです。

ですので、プログラミング×「何か」、この「何か」を皆さん各個人で大切にしていただき、その道で活躍することを

目指すことが大事だと思います。プログラミングを極めることはとても難しく、それこそ一部の人になってしまいますが、

かけ算の考え方で行けば、皆さんが「何か」を表現するために「プログラミング」を活用することができれば、

それだけでプログラミングができない人より遥かに多くのことが表現できます。それは本当に大切なことです。

 

私は多くのことで皆さんの力になることはできません。しかし、自身で考えてそれを作るといった経験を若いうちから

積み重ねることによって、皆さんの人生の中で大きな力となることは、一つ実感を持ってお伝えできることであると

思います。そして、この皆さん自身で考えた結果は、決して私たちが準備した答えの中にとどまることはなく、

結構な高確率で世の中には存在しない、新しい問題であったり、新しいゲームであったりします。

それを自身で作り上げ、only oneのものを世の中に発信できる力、そして時代に流されない基礎力(しかし最も大切な

力の一つ)、そして単発的に何かを作ったというところを超えて、皆さん各個人がやりたい「何か」とかけ算できるような

継続的に取り組める力を身につけましょう。

 

ご参加の程、お待ち申し上げております。

そして私たちと一緒に、この講習会のあともonly oneを発信する活動をしましょう!

 

                          EM Software Director

                          大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科 非常勤講師

                          関西学院高等部情報科 非常勤講師

                          兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 大学院生

 

                                                福井 昌則